木造住宅の構造耐久

シロアリと木造住宅の耐久性。
「見えない場所」が問題になる理由。

シロアリによる木材劣化は、新築後に気づく頃には すでに再施工が難しい場所で進んでいることがあります。 このページでは、シロアリの種類と行動特性、 壁内・小屋裏など見えない場所が問題になる構造的な理由、 そして処理の考え方の違いについて整理します。

このページの要点

  • 日本の木造住宅で問題になる主なシロアリは、ヤマトシロアリ・イエシロアリ(地下から侵入)と、アメリカカンザイシロアリ(乾いた木材に空中から侵入)です。
  • 被害は床下だけでなく、壁内・小屋裏・柱など、完成後には施工者が届かない場所で進行します。
  • 新築時は構造材がすべて露出している唯一の機会であり、ホウ酸処理は床下に限らず構造材全体を処理の対象にします。
  • 床下中心の再処理(5年ごと)だけでは、手の届かない部位の被害に対応できません。
シロアリの種類

日本に生息するシロアリの主な種類

シロアリは種類によって生態・行動特性が大きく異なります。 どの種が問題になりうるかを把握することが、 適切な対策を選択するための前提になります。

ヤマトシロアリ
ヤマトシロアリの有翅虫(羽アリ) ヤマトシロアリの職蟻
有翅虫(左)/職蟻(右)
イエシロアリ
イエシロアリの有翅虫(羽アリ) イエシロアリの職蟻
有翅虫(左)/職蟻(右)
アメリカカンザイシロアリ外来種
アメリカカンザイシロアリの有翅虫(羽アリ) アメリカカンザイシロアリの職蟻
有翅虫(左)/職蟻(右)
ヤマトシロアリ / イエシロアリ
在来種・地中から侵入する種
  • 土中に巣を作り、地中から木材に侵入する
  • 基礎・床下周辺から上部へ向かって食害する
  • 水分を好む傾向があり、湿った木材を選ぶことが多い
  • 床下への適切な処理で一定程度対応できる
アメリカカンザイシロアリ
外来種(乾材シロアリ)
  • 土中に巣を作らず、木材そのものが巣になる
  • 乾いた木材を好み、壁内・小屋裏など上部に生息する
  • 床下を経由せずに木材に到達することがある
  • 被害に気づくまでに長い時間がかかることがある
分布域について

アメリカカンザイシロアリは主に温暖な沿岸部での確認が多く、 国内では特定地域への偏りがあります。 ただし輸入木材・木製家具などを介した 新たな侵入・定着の可能性もあるため、 地域を問わず対策の考え方として知っておくことが有用です。


アメリカカンザイシロアリ

床下を経由しない。
それが、この種の構造的な難しさです。

アメリカカンザイシロアリは、在来種とは根本的に異なる行動をとります。 床下ではなく、壁内・小屋裏・家具などの乾いた木材を 直接の生活域とするため、従来の防蟻処理の考え方では 対応しきれないケースがあります。

侵入経路の比較概念図
一般的なシロアリ(地下侵入型)とアメリカカンザイシロアリ(空中侵入型)の侵入経路を断面図で比較。在来種は地面から床下を経由して侵入するため対策範囲は床下・基礎付近に限られるが、アメリカカンザイシロアリは軒先・外壁・窓枠の隙間など空中から家全体に侵入するため、家全体(屋根・外壁・開口部)の対策が必要。

※ 上図は侵入経路の概念を示すものです。実際の侵入経路は建物の構造・環境によって異なります。

アメリカカンザイシロアリの主な特性

土中の巣を持たない

在来種は土中に巣を作り、土壌から水分を得ながら生活しますが、 アメリカカンザイシロアリは木材そのものを巣とします。 床下の土壌に依存しないため、 床下からの侵入経路を断つだけでは対応できません。

乾いた木材を好む

湿った木材を好む在来種とは異なり、 乾燥した状態の木材(壁内の柱・間柱・野地板・小屋組みなど)を 生活域とします。 壁内など、居住者からは見えない場所で被害が進むことがあります。

発見が遅れやすい

床下調査では発見できない場合があり、 壁の内部や小屋裏など目視確認が難しい場所で進行します。 糞粒(ケシの種に似た粒状の糞)が室内で見つかることが 発見のきっかけになることもありますが、 気づくまでに時間がかかる傾向があります。

なぜ「構造的な問題」なのか

アメリカカンザイシロアリへの対応が難しいのは、 単に「強力な種だから」ではありません。 床下を起点としない行動特性のため、 「床下への処理→侵入を遮断する」という在来種向けの発想が そのまま当てはまらない、という構造的な理由があります。 これは処理の対象範囲・考え方を 見直す必要があることを意味します。


見えない場所の問題

竣工後には、もう届かない場所がある。

木造住宅の構造材の多くは、完成後には壁や天井の中に 隠れてしまいます。問題はこれらの部位への再施工が 現実的に難しいことです。

竣工後に再施工が難しい部位
壁内部
柱・間柱・筋交い。 仕上げ材が施工された後は竣工後の再処理が困難。
小屋裏・屋根組み
垂木・小屋束・棟木・野地板。 天井が施工されると目視確認も難しくなる。
断熱材周辺
断熱材に隣接する構造材。 断熱材の充填後は構造材への直接処理が難しい。
梁・横架材
上階の床組みに含まれる梁・大梁。 竣工後は上下から仕上げ材に挟まれる。
接合部周辺
柱脚・梁受け・仕口など構造上の要所。 金物が設置されると周辺材への処理が制限される。
床下深部
点検口から遠い床下エリア。 基礎形状によっては人が入れない場所もある。

これらの部位に問題が生じた場合、確認するだけでも 壁・天井・床の一部を解体する必要があります。 被害が構造材の強度に関わる段階まで進んでいた場合、 補修の規模はさらに大きくなります。

だからこそ、新築時に「処理できる唯一のタイミング」を 有効に使うことが重要です。 一般的な防蟻処理(揮発性の薬剤)の場合、効果が短期間で低下するため 定期的な再処理が必要ですが、竣工後は壁内など 届かない部位が増えます。 揮発・分解しにくいホウ酸を使い、 新築時に見えない構造内部まで処理しておくことには、 この「後から届かない」という問題への合理的な答えがあります。


シロアリ被害の実例

被害は、見えないところで進行しています。

食害された構造材や蟻道(ぎどう)など、実際のシロアリ被害の写真を掲載しています。 被害の実態を確認したい方は、下のボタンから表示してください。

⚠ 閲覧注意 シロアリ被害のリアルな写真が含まれます。苦手な方は、このまま読み飛ばしてください。
シロアリ被害の様子(動画・18秒)
土台の側面に蟻道が帯状に付着している様子 撤去前
蟻道を取り除くと、土台の内部が食害されて筋状に残った様子 撤去後
食害された土台(同じ部材)― 蟻道を取り除くと、その下で木部が食い荒らされていました
外壁を剥がすと、隅の柱がシロアリに食われて内部までぼろぼろになっている様子
食害された柱 ― 主要構造材がシロアリに食われ、本来の強度を保てない状態
床下で、基礎の側面を土の筋のような蟻道が2本立ち上がり、上の土台が食害されている様子
蟻道(ぎどう)― 基礎の側面を伝って土台にたどり着いたシロアリの通り道。その先の土台に被害が出ています
アメリカカンザイシロアリの被害 ― 食害された桁。表面は残っていても内部が食い荒らされ、手で剥がれるほどもろくなっています(動画・30秒)

従来工法の限界

なぜ床下中心の防蟻では
対応が難しいのか

現在、木造住宅の防蟻処理には揮発性の薬剤による 床下中心の処理が広く行われています。 この方法は在来種のシロアリに対しては有効なアプローチですが、 構造的に対応が難しいケースがあります。

効果が短期間で低下する

揮発性の薬剤は時間経過とともに効果が低下します。 保証期間内であっても木材劣化が発生するケースがあり、 調査データにもその実態が示されています。 定期的な再処理が必要ですが、壁内などへの再処理はできません。

床下中心の処理範囲

一般的な防蟻処理(揮発性の薬剤)は、新築時でも 基礎天端より高さ1m以内の部材が処理対象となることが一般的です。 壁内上部・小屋組みなど、アメリカカンザイシロアリが 生息しうる部位への対応は設計上含まれていません。

竣工後の再処理範囲の制限

竣工後に揮発性の薬剤を再処理できるのは、 床下の一部に限られます。 仕上げ材に覆われた壁内・小屋裏への再施工は 現実的に困難です。

保証期間内でも木材劣化は起きる

保証があっても、被害を完全に防ぐことは保証しません。 調査データは、一般的な防蟻処理(揮発性の薬剤)の保証期間内でも 木材劣化が発生していることを示しています。

気密性の高い現代住宅での課題

近年の木造住宅は高断熱・高気密化が進んでいます。 気密性の高い住宅では室内空気の入れ替わりが少なく、 揮発性の薬剤の成分が室内空気に滞留しやすい環境になるとも指摘されています。 このため、揮発性の薬剤を 使用することが難しくなります。 揮発しないホウ酸を用いるボロンdeガード工法は、 こうした住宅環境にも適した工法として位置づけられています。

約7%
一般的な防蟻処理(揮発性の薬剤)の「保証期間内」における木材劣化の確認率

調査対象1,250棟のうち126棟で、保証期間内にもかかわらず シロアリ等による木材劣化が確認されています。 保証があっても、シロアリ等による木材劣化は起きます。

※ 出典:国土交通省補助事業 シロアリ被害実態調査報告書


ボロンdeガード工法の考え方

処理範囲の思想を、
床下から構造全体へ。

ボロンdeガード工法では、処理範囲を 標準処理・1階全部処理・全構造材処理から選ぶことができます。 床下を中心とする標準処理でも在来種には有効ですが、 床下を経由しないアメリカカンザイシロアリまで見据えるなら、 家全体をカバーする全構造材処理が必要になります。 私たちが全構造材処理を推奨しているのは、そのためです。

新築時に「届く唯一のタイミング」を活かす

壁内・小屋裏・断熱材周辺など、竣工後には届かない場所への処理は 新築時にしかできません。 ボロンdeガード工法は、この機会を最大限に活かすことを基本とします。

処理範囲は選べる。私たちの推奨は「全構造材処理」

一般的な防蟻処理(揮発性の薬剤)が基礎天端より高さ1m以内を対象とするのに対し、 ボロンdeガード工法は、標準処理・1階全部処理・ 家全体をカバーする全構造材処理から選べます。 そのなかで私たちが推奨しているのは全構造材処理です。 アメリカカンザイシロアリは今はまだ身近でないとしても、 分布の拡大により将来的に問題となる可能性は高く、 壁内・小屋裏まで処理できる新築時に備えておく意味は大きいと考えています。

揮発しない材料で、再処理不要の状態を作る

ホウ酸は揮発性の薬剤のように揮発・分解して消えていく性質ではないため、 新築時に適切に施工すれば原則として再処理が不要です。 壁内など竣工後に届かない部位も、新築時の施工で長期間カバーできます。

施工品質の管理が効果を決める

処理範囲を広げるだけでは不十分です。 施工濃度・処理量・処理部位の管理なしでは、 材料の性能を引き出せません。 施工会員による施工マニュアル準拠の施工が前提です。

屋根(構造部材)へのホウ酸処理の施工事例。軒下・内部構造材・小屋組みへの噴霧、ホウ酸施工士による刷毛での丁寧な塗布など、新築時の各部位への処理の様子。
対応可否について

アメリカカンザイシロアリへの対応可否は、 地域・建物の構造・状況によって異なります。 詳細は施工会員にご相談ください。 すべてのケースに完全対応を保証するものではありません。


ホウ酸ダスティング処理

壁内・小屋裏への施工方法:
ホウ酸ダスティング処理

液体のホウ酸処理が難しい場所には、 粉末状のホウ酸を隙間や空洞部に充填する 「ホウ酸ダスティング処理」が用いられます。 壁内・小屋裏など、刷毛や噴霧では届かない部位への 処理手段として位置づけられています。

ホウ酸ダスティング処理の特性

粉末状のホウ酸を空洞・隙間に充填する処理方法

壁体内・小屋裏・断熱材周辺など、液体処理では届きにくい空洞部に ホウ酸の粉末を充填します。 施工後はその場所にとどまり続け、空洞を通じて侵入・移動しようとする シロアリに触れることで効果を発揮します。 羽アリが新たに侵入する際や、木材内でコロニーが形成された後に 群飛が発生した際も、必ずホウ酸の粉に触れることになるため、 継続的な防除効果が期待できます。

液体処理とダスティング処理の関係

ボロンdeガード工法において優先されるのは、 木材にホウ酸溶液をしみ込ませる液体処理です。 構造材そのものに処理することで、木材を直接保護します。
ホウ酸ダスティング処理は、液体処理が届きにくい空洞部を補完する処理として位置づけられています。 両者を組み合わせることで、より広い範囲をカバーできます。 ホウ酸ダスティング処理単独でも機能しますが、 木材へのホウ酸処理との併用が基本的な施工の考え方です。

ホウ酸ダスティング処理の主な対象部位

✓
壁体内空洞部

柱と間柱の間、壁の内部空洞など液体処理では届きにくい空洞部。

✓
小屋裏・屋根組み

垂木間・小屋組み周辺の空間。 アメリカカンザイシロアリが好む乾材部位への対応として。

✓
断熱材周辺

断熱材に隣接する構造材の隙間。 充填後に液体処理ができなくなる部位への対応として。

✓
木造部材の接合部・仕口

金物周辺や複雑な形状の接合部。 液体が届きにくい形状への補完として。

ボロンdeガード工法の処理対象部位について

よくある質問

シロアリ対策についての質問

国内では主に温暖な沿岸部での確認が多く、分布には地域差があります。 ただし、輸入木材・家具などを介した新たな侵入や、 温暖化による生息域の変化も考えられるため、 対策の考え方として知っておくことは有用です。 詳細は施工会員にご相談ください。
竣工後の住宅に対しては、点検口からの目視確認や、 室内に糞粒(ケシの種に似た細かい粒)が落ちていないかの確認 などが調査の手がかりになります。 心配な場合は施工会員または専門業者に相談することをお勧めします。 リフォーム時に一部の部位への処理が可能な場合もありますが、 対応範囲は新築時より限定されます。
糞粒(ケシの種に似た粒状の糞)が室内の床や棚の上に 落下しているのを見つけることが発見のきっかけになることがあります。 砂粒のような細かい粒がいつの間にか積もっている場合は、 専門業者に相談することをお勧めします。 ただし、他の原因でも類似した粒が発生することがあるため、 専門家による確認が必要です。
すべての被害を完全に防ぐと保証するものではありません。 ホウ酸処理は、処理された木材においてシロアリや腐朽菌の被害を 抑制することを目的とした工法です。 処理範囲・施工品質・定期検査の実施が 効果に大きく影響します。 詳細はボロンdeガード工法のページをご確認ください。
ヤマトシロアリ・イエシロアリなどの在来種に対しても、 ホウ酸処理は有効な防蟻防腐処理として機能します。 ボロンdeガード工法は、床下だけでなく構造材全体を処理の対象とするため、 在来種(地中から侵入)とアメリカカンザイシロアリ(空中から侵入)のどちらにも対応できます。
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